メトロニダゾールは応用が利く薬?抗菌・抗原虫作用で治療可能な疾患が様々
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ズラリと並べた薬は全てメトロニダゾールを成分とする薬です。
ニトロイミダゾール系の抗生物質で、原虫や細菌が原因の疾患治療に使われています。
- メトロニダゾールは応用が利く薬?
抗菌・抗原虫作用で治療可能な疾患が様々
- 良薬は口に苦し!メトロニダゾールは犬のアカラスやトリコモナス症の治療に使える
- 犬猫用はないけどメトロニダゾール製剤は種類が豊富
下にメトロニダゾールを治療に使う疾患を列挙していますが、守備範囲が広いですよね。
メトロニダゾールを治療薬として使う疾患
原虫の感染
アメーバ赤痢:赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)
トリコモナス症:膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)
ジアルジア症:ジアルジア(G. duodenalis)、ランブル鞭毛虫
肝膿瘍(アメーバー性):赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)
嫌気性細菌の感染
歯周病(歯周炎・歯肉炎)
肺炎
肺膿瘍
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ感染症)
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ感染症)
ピロリ菌;ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)
肝膿瘍(細菌性)
腹膜炎
感染性腸炎
偽膜性大腸炎
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)
深在性皮膚感染症
がん性皮膚潰瘍
細菌性膣症
子宮、卵管、卵巣の感染症
(骨盤内炎症性疾患 : pelvic inflammatory disease : PID)
怪我や火傷などの二次感染
など
細菌性の疾患を見ると全て体の内側、深部です。
原因となる細菌が生育に酸素を必要としないので嫌気性細菌といいますが、メトロニダゾールは嫌気性細菌に対する抗菌作用があります。元々は原虫感染が原因のトリコモナス症の治療薬(抗原虫薬)として使われていましたが、嫌気性菌に対する抗菌姓が高いこともあり抗菌薬としても使われています。
駆除したい寄生虫で選ぶ虫下しのページを見ると、メトロニダゾールを成分とする薬(フラジール、メトロジール)は駆虫対象となる寄生虫が原虫だけとなっているので心もとないようにも思えますが、そうではないことがわかりますよね。
メトロニダゾールは原虫と細菌を対象とする抗原虫薬・抗菌薬なので、線虫や条虫を対象とする他の駆虫薬とは土俵が違うのです。
残念なことにメトロニダゾールは日本では動物用医薬品として承認されていません。
ですので、犬や猫の治療にメトロニダゾール製剤を使う場合は人用の医薬品を使用することになります。製品名を挙げるとすれば内服薬の「フラジール」「アスゾール」ですね。
人に使われているメトロニダゾール製剤は他にも「フラジール腟錠」や「ロゼックス・ゲル」がありますが、これらは外用剤でフラジール腟錠はトリコモナス膣炎や細菌性膣症の治療に、ロゼックス・ゲルはがん性皮膚潰瘍の治療に使われます。
がん性皮膚潰瘍は嫌気性細菌が患部に感染することで独特の臭いを発するようになります。この臭気の原因が細菌ですから、抗菌作用のあるメトロニダゾール(0.75%含有)入りのゲルを塗ることで殺菌し臭いをを軽くするのです。
面白いことにロゼックスゲルはがん性皮膚潰瘍臭改善薬としてだけでなく、まつげダニ(デモデックス)、ニキビダニ、顔ダニといった毛穴の中で殖えた毛包虫が原因のニキビ治療に抗寄生虫薬としても使われているのですが、「メトロニダゾールは抗原虫・抗菌薬なのになぜ毛包虫?」と疑問が沸いてきませんか?
メトロニダゾールは抗菌・抗原虫作用だけでなく、毛包虫に対する駆虫作用のほかにも抗酸化作用、抗炎症作用、免疫抑制作用があるからなのです。常備薬としていつでも使えるようストックしておきたい万能薬のようにも思えますよね。
良薬は口に苦し!メトロニダゾールは犬のアカラスやトリコモナス症の治療に使える
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犬のジアルジア感染の治療にメトロニダゾールが使われています。
ジアルジア症の原因がランブル鞭毛虫ともいわれるジアルジアなのですが、これの栄養型、トロフォゾイトいう両サイドに毛がちょろっと生えたお化けのような形をしたもの(「ジアルジアってどんな虫?」のページの一番目の画像)が、十二指腸や小腸の絨毛上皮に付着して粘膜を消化してしまいます。
犬がジアルジアに感染すると下痢や軟便を繰り返しますが、その柔らかくてユルイうんちの中に粘液や脂肪が混じったりします。脂臭く青白っぽい色をした脂肪便、シャバシャバで水がそのまま出てきたような水様性便、どす黒くて泥状、赤くてゼリー状の粘血便だったりするのは、トロフォゾイトの小腸寄生で粘膜がダメージを受けているからなのです。
健康状態が良ければジアルジアに感染しても症状が出ない(不顕性感染)のですが、感染したのが子犬であったりストレス等で免疫力の低下や不全が起きている場合だと、下痢が続いて止まらないなど症状が酷くなってしまいます。
メトロニダゾールは日本では動物用医薬品として認められていませんが、子犬へも投与が可能な薬としてベンズイミダゾール系の薬とともにジアルジア感染の治療に使われています。
ニトロイミダゾール系薬剤
メトロニダゾール最も一般的に使用されている.
12.5〜32.5mg/kg の1日2回,5〜8日の経口投与で1クール投与の有効率は50.0%.
チニダゾール50mg/kg の11回,3日間の経口投与で1クール投与の有効率は71.4%.
ベンズイミダゾール系薬剤
ベンズイミダゾール系薬剤を使用した場合には消化管内線虫の駆除も同時に可能である.
フェバンテル配合剤フェバンテルとして30mg/kg を1日1回3 日間の経口投与で1クール投与の有効率は75.0%.
フェンベンダゾール日本国内では販売されていないが個人輸入で使用可能.
50mg/kg の1日1回,3日間の経口投与で1クール投与の有効率は81.8%.
引用:犬のジアルジア感染 北里大学獣医学部 伊藤直之
上記の有効率というのはジアルジアのトロフォゾイト(栄養型)に対する数字で、糞便の中から検出される栄養型を指標としています。フェンベンダゾールはパナクールオーラルペーストやパラゾール経口液、フェバンテルは犬用キウォフプラスの成分として使われていますね。
メトロニダゾールは犬や猫のIBD(炎症性腸疾患)、トリコモナス症、毛包虫症(ニキビダニ症、アカラス)の治療薬としても使われています。犬や猫の慢性的な原因不明の軟便や下痢の多くがIBDといわれていて、ステロイドに否定的な方はメトロニダゾールを選択したりしていますね。
毛包虫症にはロゼックスゲルのような外用薬が犬猫用にはないので、メトロニダゾール製剤を服用させることになります。どのような疾患であれ、犬や猫にメトロニダゾールを飲ませる時は少し工夫が必要かもしれません。薬がとても苦いのです。
そのままだと飲んでくれないこともありますから、オブラートや「おくすりちょーだい」で薬を包むようにして苦みを隠すようにすれば投薬が楽になるはずです。苦みがあるとはいえメトロニダゾールは副作用が少ない薬だといわれています。
メトロニダゾールはジアルジアの栄養型(トロフォゾイト)に作用するからともいえますが、実際のところ犬や猫にどのような副作用が現れるのかについては、メトロニダゾールが動物用医薬品として認可されていないこともあって不確かであるというのが正直なところです。
参考までに人がメトロニダゾールを服用したときの副作用を例に挙げると、吐き気、嘔吐、胃の不快感、食欲不振といった消化器症状です。メトロニダゾールを始めとする薬は肝臓や腎臓で代謝・排泄されますから、肝臓や腎臓に疾患がある場合の投薬は控えるか獣医師に相談されることをおすすめします。犬や猫が妊娠している場合も同様です。
犬のジアルジア症はトロフォゾイトが小腸粘膜に悪さをすることによって養分の吸収が阻害されるほか、腸内にいる常在細菌のバランスも崩れてきます。メトロニダゾールはトロフォゾイトを殺す作用はありますが、この乱れた腸内環境を改善することはできません。
ジアルジア症の治療の応用として、メトロニダゾールに足らない働きをカバーするプロバイオティクスを利用するといった方法もあります。本来プロバイオティクスは腸内細菌の仲間ですから、門外漢のジアルジアを腸内から追い出すのにも一役買ってくれますよ。
参考:平成28年1月26日厚生労働省資料12-4 メトロニダゾール
「犬や猫の炎症性腸疾患」 東京農工大学獣医内科学研究室
「犬のジアルジア症に対するプロバイオティクス応用の可能性」
フラジール 添付文書、 アスゾール 添付文書、 ロゼックス・ゲル 参考資料
犬猫用はないけどメトロニダゾール製剤は種類が豊富
メトロニダゾール製剤を商品名で分けてみました。ご覧の通りすべて飲み薬です。
フラジール 200mg 400mg 500mg
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フラジールは人用の医薬品ですが、動物用医薬品としても使われています。
メトロジール 200mg
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メトロジール200mgはフラジール200mgのジェネリック薬です。
メトロニダゾール 200mg
メトロニダゾールは成分名がそのまま商品名となっている薬です。
メトロニダゾール含有量 |
価格 |
内容量 |
購入 |
---|---|---|---|
200 r |
1,594円 |
21 錠 |
|
200 r |
2,098円 |
90 錠 |
|
200 r |
2,345円 |
90 錠 |
|
400 r
|
3,115円 |
90 錠 |
|
500 r |
1,693円 |
20 錠 |
メトロダニゾールの使い方
1日2回、7日間連続投与
使用期間は、症状の改善の程度や副作用の有無などによって変わってきます。
症状が改善されたように見えても再発防止のためには使用しきることが重要です。
メトロダニゾールの使用上の注意