友達が遊びに来てくれない!飼い犬のせいで人が家に寄り付かないお家
ある所に、面倒見がよく優しくて気さくなYさんが住んでいます。
その人は社交的な性格でもあるので友人知人が多くいます。外でお茶をするのも落ち着かないからと、「うちへおいでよ」と人と会うたびにお誘いをしているのですが、「あぁ、最近うち慌ただしくて」「ありがとう!でもまた今度」とつれない返事ばかりで、なかなか人が自宅へ遊びに来ません。
なぜでしょう?
Yさんとの会話がつまらないからではありません。むしろとても楽しいのです。原因はYさんが飼っている犬にあります。Yさんの犬は、今でも人気のある犬種として知られているA種とB種を掛け合わせてつくられたミックス犬です。見た目はB種だけども、よくよく見るとA種の雰囲気も持ち合わせています。ですが、Yさんの犬は見た目と相反し、とても激しい性格をしています。
とにかく吠える。いつでも吠える。ひたすら吠え続ける。
しかも、外へ連れ出されたときには、通り過ぎる人を噛もうとせんばかりにガサガサガサっと寄っていく、そんな犬なのです。自宅にいる時でさえ、外を歩いている人を家の中から部屋を横断して追いかける形で吠えたてるくらいですから、そのような犬だと知らない人からすれば、「あらかわいい♪」に見えてしまいます。
Yさんが在宅しているときでさえこの状態で、お留守の時はなおさらです。
しかもYさんは自宅にいることがほとんどです。あなたが近隣にお住まいでしたら、きっと「うるさい!」と思うはずでしょう。それほどはた迷惑な犬なのです。「躾がなってない!」そう、全くできていません。窓や扉を閉めていてもうるさく聞こえるほどなのに、Yさんは全くです。
慣れなのか諦めなのか、はたまた自分の犬の吠え声をBGMくらいにしかとらえていないのかも知れません。Yさんの犬はもう10歳です。この間、犬のしつけについて真剣に考えていなかったからなのか、だからこのような犬に育ってしまったのだと思われても致し方ない状態です。犬がなまじ小さいがため、犬への接し方も甘々です。
「こら〜、●●ちゃん、ダメでしょ」文字で表わすとこのような感じです。
「駄目っ!」もしくは「NO!」ときっぱりと言えないのです。声もトーンが高いので、犬からすると褒められているようなものです。犬もシュンとはするものの、全く理解している様子はなく、反省をしているふりにしか見えません。犬が何か“イケナイ”ことをした時・している時は、現行犯ですぐさま叱らなければ意味がないのです。
Yさんは自分の子供には厳しいのですが、犬に対しては叱り慣れていません。
慣れというよりも叱り下手なのでしょう。もしかすると、叱るのを怒るととらえているのかもしれません。かつてYさんがこぼしていました。「飼い始めた頃、家の中でトイレを失敗したときに家人が喚くような感じで●●ちゃんに何か言ってた。その日を境に●●ちゃんは家の中でトイレをしなくなった」と。
Yさんの犬は排泄行為を咎められたと理解したのでしょう。叱り方がわからなかったがために犬を怯えさせてしまい、怖がる犬を可哀そうに思った経験から、Yさんは犬をビシっと叱れないのです。Yさんの犬は無駄吠えが酷いだけではありません。噛み癖もすごいのです。他人はもちろんのこと家族にまで普通に噛むのです。
Yさん宅へ人が遊びに来ない理由、その一番の原因は犬が客人に噛みつくからです。
客人が座ってYさんと談笑していたら、すぐそばまで来て散々吠えたて、ひとしきり吠えたら自分の定位置に戻る。そして、客人が席を立ったと同時に走り寄ってきて膝下あたりを狙って噛みついてくるのです。招かれた人は大抵噛みつかれています。
同じ人で何度もYさんちの●●ちゃんに噛まれた人がいます。
そのような犬と知っているので、Yさん宅へお邪魔している間は犬を刺激しないよう大人しく振舞っていても、それでもやはり噛まれてしまいます。他人を噛んだ犬に対するYさんの反応というと、「あ〜、噛んでる。大丈夫?」とそれだけで、犬を叱りつけることはしません。傍目には服を噛んでいるくらいにしか見えないのでしょう。
犬は客人を自宅に勝手に入ってきた侵入者であり、しかも自分の振舞い(噛んだり吠えたりすること)がイケナイことだと叱られることもない、むしろ飼い主であるYさんに認められているくらいに理解しているのでしょう。Yさん曰く「臆病で怖がりだから吠えるのよね。●●ちゃん馬鹿だから」とのことです。
Yさんの犬は小型犬です。この犬が中型犬や大型犬だったらどうでしょう?
パワーも迫力も桁違いですよね?体が大きくなるにつれ、何か問題があると注目度も高くなってしまいます。しかし、“大型犬だから”とか“危ない(と偏見を持たれている)犬種だから”ちゃんとしなければ、ではありません。犬種や体の大小関係なく、どの犬もしっかり躾やトレーニングがなされておくべきなのです。
家族以外の第三者と自分の犬が関わることが全く無いことはありません。
動物病院へ連れて行ったりしますし、郵便局や運送会社の配達員が家に来たりします。誰もいないと思わしき場所へ連れ出したとしても、「もしかしたら他に誰かいるかもしれない」くらいに考えておかないと、誰もいない体で犬を放したら、急に走り出してよその人を噛んでしまったことなんて話は枚挙にいとまがありませんから。
Yさんの犬に関しては、Yさん家族が犬に甘くて厳しくできない、犬のしつけ方を知らない、しつけの必要性を感じていない、犬が高齢である、犬が馬鹿で臆病だからとの諦め、犬の社会化が不足している、など様々なことが挙げられます。
どんなに親しくしていても、よそ様のお家の犬について言及できる人はそうそういません。
でも、もし何か言われたら、自分の愛犬を否定されたようでグサッとくるかもしれませんし、凹んでしまうかもしれません。それか、自分の飼い方・育て方が悪かったのかと自己嫌悪に陥るかもしれません。反面、「うちはこうだから!」と反発心を持ってしまうかもしれません。これもまた人それぞれです。
大切なのは気づきとその後の行動です。気づけるか、気づこうとするか、気づかされるか。そして、複雑な思いがあったとしても真摯に受け止め、改めるよう努めるか否かですね。でないと、自分の犬が原因で人が寄って来ないことになりかねませんから。開き直りはいけません。何も物事は解決しませんし、前進しませんので。