肥満細胞腫に効果があり、これまでの抗がん剤治療薬と比べて副作用の少ない薬
目で見てわかる大きさの腫瘍であるなら外科手術で取り切ることができるのですが、小さすぎて分からない微細な腫瘍であったり、全身に広がった腫瘍の治療に有効なのが抗がん剤です。でも、抗がん剤を用いた化学療法には副作用がつきものですよね。
腫瘍細胞を抗がん剤が叩いてくれると同時に正常な細胞も叩かれてしまうので、脱毛、悪心、嘔吐、吐き気、白血球等の減少、下痢などの症状が見られます。
抗がん剤は腫瘍細胞の増殖を抑制するように働きます。抗がん剤の種類によって作用機序は異なりますが、細胞の数が増えるために必要な、DNA合成、代謝、栄養供給、細胞分裂を阻害したり、DNAを壊したりします。細胞が分裂するのは腫瘍だけではありません。
腫瘍細胞と同じく普通の正常な細胞も細胞分裂をしていますから、抗がん剤の影響を受けてしまいます。この結果が副作用なんですね。がん治療に抗がん剤を用いる場合、副作用を避けることは難しいのですが、症状に応じた薬を併用することで症状を軽くしたりします。
抗がん剤といっても実にたくさんの種類がありますが、ここでは、犬の肥満細胞腫の治療にも使われている、正常な細胞へのダメージを少なくし、がん細胞だけを攻撃することを目指す分子標的薬について触れてみますね。
イマチニブ製剤は副作用の少ない分子標的治療薬
上に2つの画像を並べていますが、これはビーナットという名のイマチニブを成分とした薬です。
ノバルティス社のグリベックのジェネリック薬で、グリベック同様に、ガン細胞の増殖や浸潤、転移にかかわる分子をターゲットにし、その分子を阻害することによってガン治療を行うとされる薬として、犬や猫の肥満細胞腫の治療に使われています。
イマチニブ製剤が犬の肥満細胞腫の治療に使われるのは、副作用が少ないからです。
なぜ副作用が少ないのか？ 従来の抗がん剤は腫瘍細胞の傷害を図って殺しますから、正常な細胞も同様な作用を受けてしまうことで副作用が生じます。それに対し、分子標的薬はガン細胞の増殖にかかわる分子を標的とする、つまり、がん細胞だけを狙って攻撃するので正常な細胞への影響が小さい、副作用が少ないと言えるのです。
ちなみにですが、イマチニブ製剤は分子標的薬の中でも低分子医薬品に分類される、チロシンキナーゼ（KITチロシンキナーゼ、Bcr-Ablチロシンキナーゼ）阻害剤です。
肥満細胞腫の治療でイマチニブ製剤が効くかどうかは c-kit遺伝子変異検査を行うことで判明しますが、検査結果が陰性であったとしても、イマチニブの効果があったとの報告があるので期待がもてます。場合によっては c-kit遺伝子変異検査を行わないでイマチニブ製剤の投薬治療をすることもあるので、その場合は、獣医師と相談されるといいでしょう。
イマチニブの投与を行ったことで肥満細胞腫の改善が見られた症例がありますので、下記の動物病院のホームページを参考にしてください。
垂水オアシス動物病院 ： 肥満細胞腫に対する新しい治療薬「イマチニブ」
レオどうぶつ病院 ： 切除困難な犬の肥満細胞腫グレードⅡへのイマチニブの効果
イマチニブ製剤の先発薬であるグリベックを用いた肥満細胞腫の治療を行った際には、その効果の高さだけでなく薬の値段の高さにも驚かれること間違いありません。先発医薬品であるグリベック錠 100mg（ノバルティス）の薬価は1錠で 2,227円、対し、日本の医薬品メーカー（19社）が販売しているイマチニブ錠 100mgの後発医薬品の薬価は 1錠が 378円～ 854円です。
犬の体重に比例して投薬量（錠剤数）も増えることを考えると、動物病院でのお支払い金額は{ ●円/錠～× ｎ（錠数）＋α } ×通院日数となってしまいますから、先発薬であるとか、日本の医薬品メーカーであることにこだわらなければ、海外の医薬品メーカーから販売されているグリベックのジェネリック薬を用いて愛犬の肥満細胞腫を治すという選択肢もあります。
グリベックのジェネリック薬「ビーナット（Veenat）」
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グリベックのジェネリック薬 ビーナット（Veenat） 400mg |
グリベックのジェネリック薬 ビーナット（Veenat） 100mg |
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別名 ： グリベック錠（ノバルティス） イマチニブ錠（エルメッド、小林化工、日本化薬、高田） |
別名 ： グリベック錠（ノバルティス） イマチニブ錠（エルメッド、小林化工、日本化薬、高田） |
1箱 ： 30錠 |
1箱 ： 120錠 |
Imatinib 400mg |
Imatinib 100mg |
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1箱 ： 6,713円 2箱 ： 12,376円 |
1箱 ： 7,079円 2箱 ： 13,108円 |
添付文書 ： グリベック添付文書、イマチニブ錠添付文書
グリベックジェネリック薬の販売価格はUS＄を日本円に換算したものを記載しています。
安価なのは海外で販売されている動物用医薬品を個人輸入の代行をしてくれる業者を利用して購入するからですが、
購入するタイミングによって販売価格が若干上下変動することがありますのでご留意ください。