犬が肥満細胞腫に罹る原因は?犬種や年齢がそのリスク要因となるのか
犬の肥満細胞腫の原因は?
免疫系の構成要素で体を守る重要な役割を担っている肥満細胞ですが、これが腫瘍化してしまう原因は不明で明らかになっていないのです。肥満細胞腫を発症する犬の平均年齢が 8〜9歳とされているので、加齢による免疫機能の低下に伴い肥満細胞が腫瘍化するのを防ぎきれなくなってきているから、とも考えられますが、シニア世代の犬のみならず、若齢犬(例 1)にも肥満細胞腫の発生が多数報告されているので、年齢は犬の肥満細胞腫の発症要因であるとは言い切れません。
例 1 )肥満細胞腫と診断された犬22頭の年齢と頭数
◎ 10歳〜18歳 : 6頭、 ◎ 6歳〜9歳 : 10頭、 ◎ 2歳後半〜4歳 : 6頭
体のどこかで頻繁に炎症が起きているということは、そこで肥満細胞がせっせとヒスタミンなどの生理活性物質を放出していると容易に考えられます。慢性的な炎症によって肥満細胞の働きが強大となってしまい正常に保てなくなることで、やがて肥満細胞が腫瘍化してしまうこの持続的な炎症が肥満細胞腫の発生に関与していることも示唆されています。これは体に慢性的な炎症を生じさせている環境が要因となっているのだと考えられます。
肥満細胞腫になりやすい犬種ってあるの?
犬の肥満細胞腫は年齢や犬種に関係なくどんな犬にも発生しますが、それでも肥満細胞腫を発症しやすいと言われる犬種がいます。この場合は遺伝的要因と言えますね。肥満細胞腫になりやすい系統の犬として、レトリバー系(ラブラドール、ゴールデン)、ブルドック系、短頭種の犬が挙げられます。
ブルドック系と(鼻;マズルの長さが頭蓋骨;スカルの長さよりも短い)短頭種は重なる犬がいますが、ブルドックやボクサー、フレンチブル、ボストンテリアが挙げられ、また、短頭種というと、パグ、シーズー、狆、キャバリア、チャウチャウが挙げられます。短頭種の犬はほかの犬種と比べるとガンを発症しやすいとも言われますが、ブルドック系の犬では良性のものが多いとされています。
肥満細胞腫と診断された犬の犬種 (一例)
ダックスフンド、 トイプードル、 ポメラニアン、 チワワ、 マルチーズ、
パグ、 ボストンテリア、 スコティッシュテリア、 雑種
コーギー、 雑種、 甲斐犬、 ビーグル、 ブルドッグ、 バセットハウンド
ボクサー、 ワイマラナー、 ゴールデンレトリバー、 ラブラドールレトリバー、
ポインター、 ジャーマンショートヘアードポインター
どんな部位に肥満細胞腫が発生し易いの?
犬の肥満細胞腫は、そのほとんど(約 90%)が皮膚、つまりは真皮や皮下組織に発生します。
特に、後肢上部や会陰部、包皮といった生殖器の皮膚が好発部位となっていて、これらの箇所だけで皮膚に発生する割合の90%を占めているのです。犬の肥満細胞腫の 81%(=90%×90%)が四肢や生殖器周辺に発生すると考えると、そこに何か皮膚病変を見つけてしまった場合は、肥満細胞腫の可能性を疑った方が賢明かもしれませんね。
皮膚と比べると、臓器への肥満細胞腫の発生は少ないのですが、好発し易いのはリンパ節、脾臓、腎臓、肝臓、心臓となっています。肥満細胞腫が皮膚に出来たら目に見えてわかりやすいのですが、臓器にできてしまうと正直なところわかりません。日頃から愛犬の様子に注意を払い、何か様子がおかしい・何だか具合が悪そうだ、と感じるならすぐさま動物病院で獣医師に診てもらうことをお勧めします。
肥満細胞腫でなくても、何かほかの病気に罹っていることもありますからね。
肥満細胞腫の発生が報告された体の部位・箇所
上唇、 唇、 喉仏付近、 右側の首の辺り
肩、 胸、 腹、 睾丸の皮膚、 尾〜太ももの間
肉球、 左後脚の関節部分、 後肢の太もも下、 左前肢の第一指と二指の間、
後肢の付け根、 左前肢、 脚の太もも部分