肥満細胞腫 切除

外科手術で取り除いたからといって安心できない肥満細胞腫

 

 

リスクを伴う肥満細胞腫の手術

 

肥満細胞腫 切除

一般的に、全身状態が良好であれば例え悪性腫瘍であっても、皮膚に発生した腫瘍の除去手術のリスクは高くはないのですが、肥満細胞腫はそうではないのです。

 

 

肥満細胞腫はT型アレルギーの主体となる肥満細胞が腫瘍化したものであり、ヒスタミンなどの生理活性物質を放出します。これによって、原発巣や転移巣よりも離れた部位で様々な症状がみられるといった腫瘍随伴症候群伴うこともあるので、肥満細胞腫の手術のリスクは低くはないのです。

 

 

肥満細胞(マスト細胞)はヒスタミンを含んだ分泌顆粒を細胞内に持っています。

 

この顆粒の体に及ぼす影響は様々で、ヒスタミンは血管を拡張させたり(発赤、熱感)、血管の透過性を亢進させたり(浮腫)、血圧を下げたり、腺分泌を促進させたり、平滑筋を収縮させるなどの働きがあります。

 

 

これらをヒスタミンの薬理作用と言いますが、例えば血管拡張作用が手術中に生じた場合には、血圧が低くなることでショックが起きたりします。ちっぽけで小さなおできのようにも見える肥満細胞腫であったりしますが、ただ取り除けばいいとは言えず、むしろ手術を行う際には注意が必要なんですね。

 

 

犬の肥満細胞腫ではどんな症状が見られるの?ヒスタミンが症状のカギを握る?!

 

 

 

肥満細胞腫の外科手術はどのようにして行うのか

 

「愛犬の体に出来たしこりを検査してもらったら肥満細胞腫だった」

 

では、どんな治療を獣医師に行ってもらうかとなると、手術するのが難しい箇所でない限りは外科手術による摘出となるでしょう。腫瘍が最初に発生した原発巣の手術は治癒率が最も高いので、根治が望める一番の選択肢でもあるのです。腫瘍周囲の正常な組織をもできる限り広範囲に切除する、四肢にできた肥満細胞腫なら断脚する、といった思い切った方法となります。

 

 

肥満細胞腫の切除手術は、腫瘍周囲の正常な組織を「えっ?!そんなにガッツリ切り取るの?」と驚いてしまうほど“縦の長さ、横の長さ、深さ”どれも十分なサージカルマージンをとって広範囲に行います。皮膚に腫瘍があるからといって、皮膚だけを広範囲に切り取るのではありません。皮膚だけでなく、皮膚の下にある皮下組織、筋膜、筋肉まで切り取る必要があります。

 

 

 

このように広範囲なサージカルマージンを取って手術を行ったとしても、約 30 %の割合で再発してしまうのが肥満細胞腫の怖いところなのです。分化度の高いグレードTの肥満細胞腫は局所的な再発の可能性は低いのですが、分化度の低いグレードVの肥満細胞腫は手術をした近辺で再発する可能性が非常に高くなっているため、切除した組織の病理組織検査を行い、腫瘍が完全に切除できているかどうか確認するとともに、その腫瘍組織のグレードを知る必要があります。

 

 

グレードとステージで知る犬の肥満細胞腫の悪性度と進行度

 

 

グレードTの高分化型の肥満細胞腫の場合、手術で完全に切除できていればその後の治療を必要としないのですが、切除が不完全であったり切除した近辺にも腫瘍が存在していれば更に広範囲に切除する、もしくは腫瘍床と周辺の組織へ放射線をあてる放射線治療が必要となります。

 

 

グレードUおよびVの中程度分化型・低分化型(未分化型)の肥満細胞腫や、腫瘍を完全に切除できない場合には更なる治療が必要となります。グレードが高くなるほど細胞が未分化なので腫瘍が特定部位に限局することなく広範囲に散在してしまうため、グレードVの場合は既に転移していると理解されておくといいでしょう。

 

 

肥満細胞腫のグレードが低ければ根治の可能性は高くなりますが、グレードが高くなるほど根治の可能性が低くなり、治療に関係なく予後が不良となります。外科手術は腫瘍を取り除く、腫瘍細胞を減らすことを目的とした対症的な治療方法ですが、肥満細胞腫による症状を軽くしたり、放射線治療や化学療法による効果を図ることにもなります。

 

 

肥満細胞腫に効果があり、これまでの抗がん剤治療薬と比べて副作用の少ない薬

 

 

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