マラセブシャンプーの使用で生じる副作用はマラセブの成分に起因することも
マラセブシャンプーは薬液100ml中にミコナゾール硝酸塩とクロルヘキシジングルコン酸塩が2gずつ入っています。この2%という濃度を薄いと思うのか濃いと思うのかは人それぞれですが、人や犬によってはマラセブを使うことで副作用が起きてしまうことがあります。
マラセブの用法・用量を正しく理解した上での使用であっても、なぜ副作用が出てくるのか。
先ずは、マラセブの主成分であるミコナゾールとクロルヘキシジンそれぞれについて解説します。
マラセブの人の副作用と犬の副作用は別にしていますので、順にお読みください。
参考 : 5%ヒビテン液 添付文書、 ミコナゾール硝酸塩クリーム1% 添付文書
ミコナゾール硝酸塩 : Miconazole Nitrate
マラセブシャンプーはマラセチア(Malassezia pachydermatis)という真菌に効果を発揮する薬用シャンプーで、その要となる成分であるミコナゾール硝酸塩は抗真菌薬の一種なんです。カンジダ属、皮膚糸状菌類、酵母やカビなど広範囲の真菌に対して強い抗菌力を持っているため、マラセブは外用として使われていますが、ミコナゾールは皮膚以外に粘膜面にも使うことができます。
粘膜にも適用されるのでミコナゾールを成分とする薬剤は剤型が多様で、軟膏クリームや注射液、腟坐剤や経口剤があります。水虫、たむし、マラセチア毛包炎、癜風(でんぷう)といった表在性の皮膚真菌症にはクリーム軟膏が、カンジダに起因する腟炎、外陰腟炎、口腔カンジダ症、食道カンジダ症の治療には腟坐剤や経口剤が使われています。
腟炎や外陰腟炎にクリーム軟膏を塗って使うこともありますが、真菌血症、肺真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎は注射剤を使って治療することになります。ミコナゾールを使っていると、副作用としてショックやアナフィラキシーショックなどの重大な症状が現れることがあります。これは注射で打った場合に12.9%の発現率で起こるとされています。
クリーム軟膏で皮膚に塗った場合、0.8%の発現率で腫れ(腫脹)、赤み(発赤)・発疹(紅斑)、かゆみ(そう痒感)、かぶれ(接触性皮膚炎)、ただれ(糜爛:びらん)、刺激感、小水疱、乾燥・亀裂、丘疹、落屑などの副作用が見られるので、体に異変を感じた場合は使用を控えることをおすすめします。
ここまで人用の薬について書いてきました。
動物用でミコナゾールの入った薬はマラセブ以外に点耳薬があります。犬の感染性の外耳炎治療に使うビルバック・エアソティック点耳薬と、これまた同じく耳ダニや細菌感染の症状を改善する犬猫両用のスロランイヤードロップスです。
次に続くクロルヘキシジングルコン酸塩のように、ミコナゾールは身近な存在の抗菌薬ではないでしょうか。
クロルヘキシジングルコン酸塩 : Chlorhexidine Gluconate
スーパーや飲食店の出入り口付近にポンプ式の容器が置かれています。
ご存知の通りあれは消毒薬で、手指を消毒します。「5%ヒビテン液」、「色がつかない消毒液」、「オロナインH軟膏」、「ヒビスコール SH」、これらの消毒液や軟膏は、クロルヘキシジングルコン酸塩を主成分としています。
繁用されているのは、クロルヘキシジンに広範囲の細菌と幾つかのウイルスや真菌に対する殺菌作用があるからなんです。殺菌してくれるだけならいいのですが、薬ですから副作用が無いとは断言できません。酷い場合にはアナフィラキシーショックが起きたりします。
クロルヘキシジングルコン酸塩は殺菌消毒薬として広く使われているので、何かしらのクロルヘキシジングルコン酸塩含有製品に毎日触れている可能性が高いと言えます。例えばオロナインをヌリヌリしている、外出先でボトル入りの消毒薬をプッシュして手を消毒している、自宅で何かを消毒するのにコンパクトな容器に入った薬液を使ったりするなどして。
気付かない間に感作され、ある時クロルヘキシジングルコン酸塩が入っている薬や消毒薬を使ったことで、直後にアレルギー反応が出てくるということもあります。花粉症に例えるとわかりやすいですよね。今まで花粉症じゃなかったのに、ある時からアレルギー症状が出て辛い思いをすることになった。そんな感じです。
クロルヘキシジングルコン酸塩に対するアナフィラキシーショックの報告があるので、例外を除き日本では粘膜に使用してはいけないことになっています。クロルヘキシジンが入っている消毒薬を使う場合には、粘膜面を避けてくださいね。目や口の中に入った場合は直ちに流水で洗い流すようしてください。
犬のマラセブシャンプーの副作用は? どんな症状が現れるの?
マラセブの副作用(犬の場合)
マラセブを使用することによって、次のような副作用が見られる場合があります。
その際にはマラセブの使用を止め、速やかに獣医師の診察を受け適切な処置を行って貰うようにして下さい。
●犬がよろめく、気持ち悪そうにしている、苦しがっている、呼吸し辛くなっている(呼吸困難)
(ショック症状があらわれることがあります)
●発疹、発赤、じんま疹、紅斑、痒み、接触性皮膚炎、びらん、刺激感、小水疱などの症状が認められる
マラセブ適用上の注意
眼に入った場合には直ちに流水を使用して十分洗浄すること。
眼に異変が認められた場合は獣医師の診察を受けること。
犬が泡を舐めたり吸い込んだりすることで、胃腸や呼吸器官に炎症を起こす場合があるため。
マラセブに含まれるミコナゾール硝酸塩は、中枢神経系に及ぼす影響として、バルビツレート代謝に関与するチトクロムP450 分子種を阻害するため、バルビツレート誘発睡眠時間の延長を示すことが知られているため。
マラセブはマラセチア属菌以外の真菌またはスタフィロコッカス属菌以外の細菌、外部寄生虫、内分泌およびアレルギー等が主因と判断される皮膚炎に対する有効性は確認されていない。
引用:マラセブ添付文書
マラセブシャンプーの使用者に対する注意事項と副作用
マラセブの副作用(人の場合)
マラセブの使用にあり、マラセブを使う人も副作用に気をつけておく必要があります。
マラセブはミコナゾール硝酸塩とクロルヘキシジングルコン酸塩液を有効成分としていますが、人用の医薬品で次のような副作用が個々の成分で報告されています。
ミコナゾール硝酸塩
発赤・紅斑、発疹、そう痒感、接触性皮膚炎、びらん、刺激感、小水疱、浮腫
クロルヘキシジングルコン酸塩
紅斑、皮膚肥厚、皮膚潰瘍、皮膚剥離、皮膚亀裂、接触性皮膚炎、角膜障害、アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様反応、眼部化学的損傷
使用者に対する注意
事故防止のため。
眼に入った場合には直ちに流水を使用して十分洗浄し、症状が残る場合には医師の診察を受けること。
やむを得ず使用する場合には授乳を避けること。
高濃度の抗真菌薬( ミコナゾール) 及び消毒薬( クロルヘキシジン) が含まれており、また、薬剤を擦り込んだ後の放置時間が10 分と長いため。
ミコナゾール硝酸塩との相互作用によりワルファリンの作用が増強する場合があるため。