猫 耳先 怪我 治癒 遅い

猫の耳にできた腫瘍:扁平上皮癌

 

 

扁平上皮癌は扁平上皮細胞が癌化したものですが、扁平上皮ってどのような細胞だと思いますか?

 

 

ドラえもんのように足の裏が真っ平で、土踏まずが無い足を扁平足というように、凹凸がなく平べったいことを“扁平”といいます。体の表面や体腔の内側を覆っている平たい細胞が扁平上皮で、細胞の重なりが一層であれば単層扁平上皮、ミルフィーユのように何層にも重なっていれば重層扁平上皮といいます。

 

 

層が幾重にも重なっていれば強度が増してきます。ある程度の刺激までなら壊れることもない、そんな頑丈さを求められる組織に重層扁平上皮が見られますが、どこでしょう? 皮膚口の中(口腔)食道肛門などです。物理的・機械的な刺激を受けるところだと考えるとわかりやすいですよね。

 

 

扁平上皮癌は扁平上皮から成る組織のガンなので、口の中(口腔)、舌、のど(咽頭)、気管・気管支、肺、肛門、女性器など重層扁平上皮に覆われた粘膜や皮膚にできます。ここでは猫の皮膚がん、耳の扁平上皮癌に的を絞って話を進めます。

 

 

猫 耳 化膿  先の方

 

 

 

猫の耳の扁平上皮癌と症状

 

「耳の先端の傷が化膿して治らない」
「耳の先を怪我して以来、ぶ厚いカサブタ(痂皮)が出来ては取れる」
「塗り薬もらったけど治らない」
「耳の先にできたカサブタがだんだん耳の根元に広がっていってる」
「いつまでたっても擦り傷が治らない。むしろよけい酷くなっている」
「耳介の先端部分がカサカサジュクジュクしている」
「耳にできた傷を痒がって掻くから傷が広がっていく」

 

 

猫の耳に異変があると目立ちますよね。

 

 

ほんの小さなかすり傷程度に思っていたら、治るどころか次第に傷が大きくなり、耳先から耳の根元にまで及んできている。しかも猫が首を振る度に、カサブタが取れて血液や膿が周囲に飛び散る。ところどころにカサブタが付いている耳先は、まるで焼け焦げたかのようにボロボロで、大きく欠けた耳は見るからに痛々しい。

 

 

猫の耳に扁平上皮癌ができるとこのような症状が見られますが、初期の頃はここまで酷くはありません。

 

 

擦り傷のような傷皮膚の荒れ小さなおできやしこりなど、まさか癌であるなんて思いもしない程度の症状です。猫にとっても自覚症状はありません。それが次第に脱毛炎症爛れ痂皮潰瘍へと変化しますが、ここまででもまだ“癌”とはイメージできず、ただ「怪我の治りが遅い」くらいに感じてしまうでしょう。

 

 

 

猫 耳先 欠損    猫 耳先 腫瘍

画像引用元:みなみ動物病院の診療日誌

 

 

 

しかし、やはり癌です。扁平上皮癌は上皮性の悪性腫瘍です。症状の進行に伴い潰瘍も大きくなり、潰瘍による上皮の欠損で出血や膿が出るようになってきます。「傷が治らない」「痂皮が出来ては取れる」といった声があるのは、傷の修復よりも癌による耳の組織破壊の方が早いからともいえますよね。

 

 

上記に加え、扁平上皮癌の症状に悪臭があります。

 

癌の進行によってできる潰瘍から発生する臭いで、癌性皮膚潰瘍臭といいます。潰瘍に細菌が感染し増えることで発生する臭いと、腫瘍組織が壊死する途中で発生する臭いが原因です。嗅ぐと思わず「うっ」となるような、独特の臭いなのでわかるかと思います。

 

 

扁平上皮癌は猫の皮膚がんで割と多い疾患で、特に白猫耳、目や鼻の周辺の毛が白い猫での発症が多く見られます。日光皮膚炎も白猫や部分的に白い毛を持つ猫に症状が現れやすいのですが、扁平上皮癌も日光皮膚炎も原因は紫外線なので、色素の薄い白い毛色の猫で外遊びが好きな子は要注意なんです。

 

 

外出時間が長いほど紫外線にあたる時間も長くなってしまいます。

 

紫外線も適度にあたればビタミンDの合成や血行・新陳代謝の促進など有益な作用を受けられるのですが、さらされ過ぎると皮膚、目、免疫系に影響がでてきます。それが日光皮膚炎であったり扁平上皮癌であったりするのです。人もそうですよね。

 

 

 

猫の耳の扁平上皮癌の治療

 

猫の耳介にできた扁平上皮癌は、癌ができた部分を中心として、その周囲組織を可能な限り広範囲に切除する治療が主体です。処置が遅くなれば癌の浸潤が耳の根元(耳根部)や頭部にまで広がってしまいます。どこまでも広がるので、放置すると頭の半分まで潰瘍でグズグズになってしまうこともありますから、治療は早ければ早いほど良いのはいうまでもありませんよね。

 

 

癌の広がり程度にもよりますが、耳介を大きく切り取るので人によっては可哀そうに思えるかもしれません。

 

けれども悪性腫瘍なので致し方ないのです。

 

耳にできた扁平上皮癌は患部をしっかり取り除くことが出来れば予後は良いことが多いのですが、転移していることもあるので要注意です。こうならないためにも、猫の耳に異常や気になることがあれば様子見をせず、早いうちに動物病院で診てもらうようにしましょう。

 

 

 

猫 耳 扁平上皮癌

 

 

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