猫 真っ直ぐ歩けない

外耳炎を治療しないと中耳炎や内耳炎にまで及んでしまいます

 

 

まずはじめに耳の中の構造を知っておいた方が、中耳炎と内耳炎について理解できると思うので、よそから借りてきた(人の)耳の中の構造図ですけども、中耳と内耳の説明をしますね。

 

「前置きはいいや」って方は、中耳炎、内耳炎それぞれの項目をお読みください。

 

 

 

ご覧の通り、鼓膜まで緑色で塗られている所が外耳道です。鼓膜より右側の赤い色のところが中耳ですが、エウスタキオ管は中耳と咽頭をつないでいる管なので中耳とは区別します。鼓室とありますが、鼓室は空間になっていて、中耳はこの空間と鼓膜から成っています。

 

 

中耳(鼓室)の中に3つの骨がありますよね。外耳側からツチ骨(槌骨)、キヌタ骨(砧骨)、アブミ骨(鐙骨)と名前がついていて、音で鼓膜が振動することによってこの3つが連動し、紫色に塗られた内耳の三半規管に音(振動)を伝えます。耳小骨が3つあるのは哺乳類だけなんだそうです。

 

 

 

猫 中耳炎 解説図

画像引用元:wikipedia

 

 

内耳はカタツムリのような形をしています。三半規管、前庭、蝸牛から成る構造をしていて、聞こえに関わるのが蝸牛、平衡感覚・バランス感覚を司るのが三半規管と前庭です。上の図だと前庭神経としか記載がありませんが、前庭は三半規管と蝸牛の間、中耳の中央に位置しています。

 

 

 

中耳炎

 

 

中耳炎とはどんな病気?

 

中耳の炎症を中耳炎といいます。外耳炎も外耳に炎症が生じたものでしたよね。中耳炎の多くは、外耳炎が耳の奥まで進行してしまうことで鼓膜に穴が開き、炎症が中耳まで及ぶことで発症します。

 

 

炎症の原因は細菌感染が大半ですが、耳の中に異物が入った、ポリープといった粘膜にできる隆起した病変や腫瘍の中耳内での形成、ダニの寄生、マラセチアの感染も、中耳炎の引き金となってしまいます。

 

 

また、中耳は耳管(エウスタキオ管)で咽頭とつながっていることから、鼻や口の中にできた炎症がエウスタキオ管を介して中耳にまで広がることで中耳炎になってしまうこともあるのです。口腔内や鼻腔内の炎症も軽く見てはいけませんね。

 

 

 

中耳炎に罹った猫の症状

 

中耳炎に実際になってみるとわかるのですが、耳が痛くなります。熱も出ます。音の聞こえも悪く、耳の奥に何か溜まったような感じがするので、溜まった何かを出そうと自然と痛い方の耳を下にしてしまいます。溜まったものを吸わせてみようと耳の中に綿棒を差し込むと、驚くほど濁った悪臭を放つ液体が出てきます。

 

 

猫も中耳炎になると同じ気持ちになるのでしょう。発熱や耳の根元を中心とした痛みのため元気が無くなり、耳を触られるのを嫌がったりします。耳の奥の違和感から、耳を手で掻くようなしぐさや、耳の奥の貯留物を出そうと頭を振ったり、傾けたりする様子が見られます。

 

 

さらには、中耳炎を発症している耳の方向に回転するような動作が見られることもあります。症状が悪化すると炎症が内耳の近くまで広がるので、平衡・バランス感覚を司る三半規管や前庭が侵されてしまうのです。

 

 

首が傾いたままの状態となり、バランスを崩してまっすぐ歩けずにふらつく・よろけるといった不自然な歩き方をする運動失調も見られるようになるのはこのためなんですよ。これら以外にも、中耳炎に罹った猫の症状はまだまだあります。

 

 

眼球が揺れる(眼振)、瞬膜(第三眼瞼)の露出、瞼の垂れ下がり、瞬きが出来ない、眼球の落ちくぼみ、縮瞳と盛りだくさんなほどありますが、眼振以外はホルネル症候群で見られる症状です。

 

 

なぜ中耳炎でホルネル症候群なのか?

 

 

ホルネル症候群は眼とその周りのまぶたなどを支配している交感神経が何かしらの原因で麻痺し、神経障害が起きる疾患です。中耳炎によって頭頸部の神経節から眼窩までの神経経路が遮断されるため、中耳炎で上記のような症状が見られるのです。

 

 

猫 頭が揺れる 病的

 

 

 

中耳炎の治療と予防

 

中耳炎は鼓膜より内側にあります。治療となると外耳炎よりも厄介で大変なものになりそうであることは容易に想像できますよね。中耳炎になる原因は様々ですから、大元の原因を治さなければなりません。中耳炎の炎症を抑えつつ、例えば耳ダニを駆除する、鼻炎・口腔内に炎症を生じさせている疾患を治すなど同時並行して行います。

 

 

炎症を抑えるために抗生物質や抗真菌薬を投与したり、耳の中が汚れていれば耳道の洗浄を施すなどしますが、鼓膜が破れているなら耳洗浄はできませんし、炎症が酷いものであれば薬剤を投与しても改善されなかったりします。

 

 

中耳炎が重度のものであれば外科手術を行い耳道や鼓室を切ることになりますが、猫に相当な負担を強いてしまいます。仮に治癒したとしても後遺症が残ることは否めません。こうなる前に何ができるかというと、予防です。中耳炎にならないよう努めるのです。

 

 

例を挙げると、口腔内の炎症から中耳炎になるので歯磨きをする。外耳炎にならないよう、耳ダニ・マダニ・ノミの駆虫・予防をする。耳の中の毛も抜けて耳道に詰まり異物となるので、耳の中を気にしてあげるなどです。些細なことのようにも思えますが、基本は大切です。

 

 

 

 

内耳炎

 

 

内耳は聴覚に関わる蝸牛、平衡感覚に関わる前庭と三半規管で構成されています。内耳で発生した炎症を内耳炎といい、何らかの原因で生じた炎症によって聴覚やバランス感覚に異常がみられます。その“何らか”の原因には中耳炎や感染症があり、中耳炎性内耳炎ウイルス性内耳炎とに区別されます。

 

 

感染症はウイルスだけに限らず細菌も含まれますよね。

 

何かに感染すると血流にのって細菌やウイルスが全身に広がります。行きついた先の内耳で炎症が起こり、内耳炎になってしまうのです。また、内耳に腫瘍やポリープが形成されて炎症が起きることもあります。中耳炎と同じですね。

 

 

内耳炎になった猫に見られる症状を挙げますと、次のような異変が見られます。

音に対する反応が悪い、  呼びかけに無反応
首が傾く(斜頸)、頭が水平になっていない、フラフラと歩く、回転するように歩く、真っ直ぐ歩けない
眼球が揺れている(眼振)、  吐く、  痛がる、  嫌がる

 

1行目は音の聴こえの異常、2行目は平衡感覚の異常であることがわかりますよね。

 

 

蝸牛や前庭、三半規管が炎症の影響を受けているからなのですが、3行目の眼振と吐くもやはり三半規管と前庭の異常に起因しています。眼球が揺れるのは前庭が炎症で障害されているからで、嘔吐するのは体の平衡感覚が失われていることによる気持ち悪さからです。

 

 

スケート選手のようにグルグル回ってみたことがありませんか?

 

回転を止めた後は頭がぐらぐらして足元がふらつきますよね。しかも頭がどちらか片方に引っ張られているような感じで自然に傾いてしまいます。鏡で自分の目を見ると目が揺れているのがわかり、ときには吐き気を催したりします。そんな感じなのでしょう。

 

 

猫の内耳炎は中耳炎と同じく、罹らないよう努める早め早めに対処するに尽きます。

 

中耳炎の記述を読まれているのでしたら、外耳炎よりも中耳炎、中耳炎よりも内耳炎の方が罹ると(いろんな意味で)大変ということがわかったと思います。とはいえ、罹らないようにするといっても、なってしまったなら予防もなにもありませんよね。

 

 

猫が内耳炎になってしまったなら、炎症を抑えるために抗生物質ときにはステロイドを中長期的に投与する治療となります。内耳炎の原因が内耳内にできた腫瘍やポリープであるならば、それを取り除くために切開手術をすることもありますし、感染症による内耳炎なら感染症の治療を行います。原因を絶つんですね。

 

 

猫の内耳炎が完治すると断言できません。

 

中耳炎の原因を除いて炎症が治まったとしても、三半規管が障害を受けたままだと猫の歩行異常やふらつき、斜頸は残ったままとなりますし、蝸牛の障害が残っていれば聴力が低下したままで猫は難聴となってしまいます。

 

 

 

猫 首 斜めに曲がる

 

 

 

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