猫の外耳炎は耳ダニ感染に起因することが多いんです
外耳炎という言葉はとてもアバウトな病名ですよね? ここでは外耳に生じた皮膚炎であるとお考え下さい。
外耳炎になると、猫は耳を痒がって後ろ足でしきりに掻いたり、耳をどこかへ擦りつけたり、頭を振ったりします。見た目にも耳の状態は悪く、耳垢が溜まって汚いのがはっきりとわかります。
痒みが激しいから居ても立っても居られないのでしょう。しきりにといえるほど猫は耳をボリボリ掻いていますから、耳の皮膚は赤く腫れあがり、ときには傷もつれ血まみれとなって痛々しい状態になっています。
ひっかき傷から細菌感染すると、化膿してそこから膿汁も出てくるようになり、膿の臭いも加わり悪臭度が増してきさえします。外耳炎が慢性化すると皮膚に厚みが増し(肥厚)、色素沈着が起こって黒ずんだ色となります。
画像引用元:エルムス動物医療センター@二子玉川
チェックポイントのどれか一つでもあてはまるなら、猫ちゃんが外耳炎に罹っている可能性が高いです。
外耳炎のcheckポイント
外耳炎の原因は色々あり、猫の場合はミミヒゼンダニの寄生によるものが多いようで、耳掃除のやりすぎも外耳炎の原因の一つとなってます。耳をきれいにするはずが、やりようによっては耳を悪くさせてしまうのです。
犬の場合はマラセチアという酵母菌あるいは細菌の異常繁殖、アレルギーによる外耳炎がよくみられます。
ここから、猫の外耳炎の原因となるマラセチア(酵母様真菌)、耳ダニ(ミミヒゼンダニ、耳疥癬)、耳掃除について触れてみます。外耳道に炎症を生じさせてしまう原因がわかると、外耳炎予防に役立つはずですよ。
マラセチア
皮膚はもちろんですが、耳の表面には何ら異常がなくても常に細菌が存在しています。
これを常在細菌といい、動物は細菌と共存しているのです。
湿度が高くなり、脂など細菌の栄養分が多くなるなどある一定の条件が揃うと、細菌が爆発的に増殖をして炎症を引き起こします。この条件を満たしやすいのが犬や猫の耳の中となります。耳の中に毛が生えていたり耳が垂れていたりするので通気性が良くないからなんです。
皮膚に炎症を来たしてしまうと分泌物が過剰に出てくるようになり、それに伴い耳の中がより一層蒸れてジュクジュクとした状態になってきますから、細菌にとってはより快適な生活環境になっているのですね。
マラセチアによる外耳炎の場合は、ミミダニが感染した時とは若干異なりすっぱい、酸味のある独特の臭いがしますから、耳垢検査で菌を検出しなくても「あ!マラセチアだ」とわかります。また、マラセチアに感染した時はベトベトとべたつくような赤褐色〜こげ茶色〜黒色の耳垢が出るようになります。
猫に激しい痒みを引き起こすのは耳ダニが感染した時と同じです。
耳ダニとマラセチアの両方同時に感染していることもありますから注意が必要です。
ミミダニ
犬や猫の耳に寄生するダニをミミヒゼンダニ(耳疥癬)と言います。
耳ダニが感染した時の耳垢の性状は特徴的で、黒っぽく、カサカサポロポロと乾燥した耳垢が多量に出ます。
耳垢は耳ダニの死骸や糞でできていますから、耳垢や外耳道からの分泌液を餌として殖えた耳ダニの分、量も増えてきます。糞には耳ダニの卵や生きた耳ダニも含まれるので、耳垢の正体を知ると気持ち悪いですよね。
耳ダニが感染すると激しい痒みに襲われますが、これは耳ダニが耳の皮膚の中にもぐったり皮膚を引っ掻いたりするからです。
こちらのページでミミダニについて詳細を書いてますのでご覧ください。
耳掃除のやり過ぎ・手技の問題
「耳の病気にならないよう、しっかりお手入れしてあげなくちゃ」と、愛猫の耳掃除をこまめにされる飼い主さんがいらっしゃいます。生真面目で几帳面なのでしょう、耳垢が少しでも残らぬよう耳の中を隅から隅までスッキリさせています。
でもですね、猫の耳の中をきれいにしてあげようとする、その親切心が外耳炎を招いてしまうことがあるのです。耳掃除の手技、頻度、使っている耳のケア用品が外耳道をキレイにしつつも、せっせと傷つけてしまっているんですね。
動物病院で猫の耳掃除やお手入れをお願いしたことのある飼い主さんは少なくありません。見ていると、獣医師や動物看護士はこなれたもので、耳専用のローションを猫の耳の中に入れ、耳をくちゃくちゃともみしだくようにマッサージして耳垢を浮かし、耳の中を綺麗にします。
中には、綿棒を使っている獣医師や動物看護士もいますが、だからと言って、同じようにご自宅で綿棒を使っての耳掃除はお薦めできません。猫の耳の皮膚はとてもデリケートなんですよ。猫の耳掃除やお手入れをご自分でなさる場合は、 綿棒は使わず洗浄用のローションだけの使用にとどめておいてくださいね。
綿棒で皮膚を刺激することによって皮膚が炎症を起こしてしまい、飼い主さんが猫ちゃんの外耳炎を引き起こしてしまう原因となってしまいますから。
関連ページ
- 耳疥癬
- 猫が耳ダニに感染すると、完治させるまでに数か月以上かかります。耳ダニが感染した時に見られる黒くて量の多い耳垢は耳ダニの卵や死骸の塊ですから、耳垢の処理が上手くできていなかったり、あちこち落ちてしまっているなら、耳ダニが再寄生(再感染)してしまいます。猫の耳ダニがなかなか治らなくてしつこい場合は、耳垢が原因だと思ってください。猫の耳ダニは人間にもうつりますから耳ダニ予防と駆除は必須といえるでしょう。
- 耳血腫
- 猫が耳血腫(じけっしゅ)になると、片耳が膨れている、耳が腫れてブヨブヨ、耳の皮膚の下に水が溜まったようにボヨボヨしている、片方の耳が倒れている、耳を虫に刺されたかのようにぷにぷにしている、といった異常が見られます。皮下出血だからとそのままにしていると、耳介軟骨が変形して耳の形がいびつになってしまいます。見つけたら直ちに動物病院で治療してもらってくださいね。猫の耳血腫は外耳炎が原因であることが多いので、外耳炎に罹っている猫ちゃんは要注意です。
- 中耳炎・内耳炎
- 猫がまっすぐ歩けない、猫の首がねじれて傾いている、眼球が左右に揺れているといった症状が見られたら、その子は内耳炎に罹っているかもしれません。猫の内耳炎の原因の一つが中耳炎ですが、中耳炎は外耳炎が原因でもあるので、外耳炎になっている猫が内耳炎になってしまうこともあります。内耳が炎症でダメージを受けるため、バランス感覚を司る三半規管と前庭の障害で、猫がふらつくといった変な歩き方をしたり、猫の眼の揺れを見ることがあります。
- 耳の腫瘍
- 猫の耳先にできた小さな傷。すぐに治るかと思っていたら、なかなか治らない。しかも何度も化膿とカサブタを繰り返す。そのような時は悪性腫瘍の扁平上皮癌を疑ってください。癌によって組織の壊死が起こっているため、猫の耳の先端部分の怪我が治りが遅い、腐ってきているような傷から出血と膿が出る、様子見をしていたら耳介がどんどん欠けていくといった病状が見られます。市販の薬を塗っても治らないので動物病院で治療を受けてください。耳介の切除手術が行われます。
- 耳の外傷
- 猫が外傷を負うのは猫同士の喧嘩によるものが殆どです。喧嘩で噛まれたり引っ掻かれたことによってできた咬傷やひっかき傷で、一見してわかるえぐれたような傷ならいいのですが、傷が治りにくて塞がらない場合は化膿しています。皮下に膿が沢山溜まっているので患部には腫れも見られます。小さな傷だからと安心するのは禁物で、放置していると化膿が酷くなり全身症状が現れてくることさえあります。初期には小さかった怪我が次第に皮膚の壊死と欠損を起こし、治療と治癒に時間が掛かりますから、猫のケンカ傷は小さいものほど厄介なことが多いんですよ。