見た目だけではわからない!様々な様相を示す肥満細胞腫
先ずは肥満細胞について知ろう
肥満細胞腫は肥満細胞が腫瘍化したものです。
つまり、肥満細胞が異常に増殖することによってできた細胞の塊なのです。
右の画像をご覧ください。細胞が膨れたように見えますよね。
その様相から肥満細胞と呼ばれています。
肥満細胞はマスト細胞、顆粒細胞ともいい、炎症やアレルギーの発現などの免疫系に関与している、重要な役割を持つ細胞なのです。
画像:Wikipediaより引用
花粉症やアレルギー性鼻炎、アナフィラキシーショック、アトピー性皮膚炎は IgE抗体を介する T型アレルギー反応ですが、これは IgE抗体が結合した肥満細胞に抗原(アレルゲン)が結合することによって肥満細胞が刺激され、肥満細胞からヒスタミンやセロトニンといった様々な生理活性物質(ケミカルメディエーター)が放出されることによって引き起こされます。
肥満細胞の本来の働きを理解していると、犬の肥満細胞腫で見られるアレルギーのような症状が、肥満細胞から放出される生理活性物質によって引き起こされるということも納得できるのではないでしょうか。
画像引用元 : 東京医科歯科大学 免疫アレルギー学分野
冒頭にも書きましたが、肥満細胞腫は肥満細胞が腫瘍化したものです。通常、肥満細胞は皮膚や腸管、呼吸器など体の外部と接する組織に存在し、抗原が体内に入ってくることで即時型のアレルギー反応に関わるため、細胞そのものを目にすることはありません。
しかし、肥満細胞が過剰に増えることで皮膚などの他の組織や器官に浸潤し、肉眼でわかるしこりやオデキといった細胞の塊を呈することで自らの存在を現してきます。
普通、「細胞腫」という表記は良性の腫瘍を指す場合が多いのですが、犬の肥満細胞腫の場合はそうでもありません。悪性傾向にある、悪性である場合が多い、と理解されておいたほうがいいでしょう。
侮れない犬の肥満細胞腫
犬の肥満細胞腫は、犬における皮膚腫瘍の約2〜3割を占めていると言われるほど多く見られる腫瘍です。
悪性の腫瘍というと、毒々しい色をしているいかにも体に悪影響を及ぼしそうな、そんなイメージを持たせるような見た目であるように思えますが、肥満細胞腫は特にこれといった特徴が外観上無いのが特徴なのです。
虫に刺されの痕のような赤くぽつんとした腫れや数ミリ程度のしこりやイボであったり、また、脂肪腫のようなものであったりと、外見上では判別しにくいのです。このように、様々な姿を見せるこの肥満細胞腫の特徴が、見た目だけでは悪性度や腫瘍の種類の判断ができない原因となっています。
犬の肥満細胞腫は体の各所に発生しますが、その約 9割が皮膚にできます。
愛犬の体にできた“しこり”の様なものを、「これって何だろう?」と触っていたりすると、その刺激によって皮膚にできた“しこり”とは全く関係無さそうな症状が表れることがあるので、例え何ともなさそうな小さなポツンとしたものであっても、いじったりしないでそっとしておきましょう。もちろん、そのまま放置ではいけません。獣医師に診てもらい診断してもらうことが重要です。
肥満細胞腫ができやすい(好発し易い)体の部位がありますが、上唇、喉仏付近、首、肩と脚、左前足、左前脚の第一指と二指の間、胸、お腹の辺り、左後脚のちょうど関節部分、後ろ足の付け根、睾丸、肉球、尾〜太ももの間辺り、脚の太もも部分、後ろ足の太もも下に腫瘤・イボ・腫れ・オデキのような異常を認め、後に肥満細胞腫と診断された例が多々あるので、日頃から愛犬の体表を注意して観察し、早期発見に心がけてあげることが大切です。